「話している途中で、自分でも長いなと思う。でも、どこを省けばいいのかわからない」
エピソードトークを短くしようとして、困ったことはありませんか。順番に起きたことを話しているつもりでも、聞き手には前置きが長く感じられる場合があります。
自分にとっては、どれもその日にあった出来事ですから、削るのは難しいですよね。そこで今回は、いったん書いた話から、中心を残して説明を減らす練習をしてみましょう。
最初から短く話せなくても大丈夫です。まず全部書き出してから、「この情報がないと、聞く人は困るかな」と見直していきます。以下のエピソードは編集の練習用に作成した創作で、僕自身の体験談ではありません。
エピソードトークが長いと感じたら、終わる場所を決める
話が長くなるときは、説明が多いだけでなく、「どこまで話すか」が決まっていないこともあります。
例えば、お店の入口で勘違いした話をするのに、そのあと食べたランチや帰りの買い物まで続ける。すると、最初に伝えたかった出来事が、別の話の中に埋もれてしまいます。
編集する前に、今回伝えたいことを一文にしてみてください。
「手動のドアを自動ドアだと思って、開くまで待っていた」
この一文は、自分が編集するときの目印にします。「ここに気づいたところで終える」と決めておくと、前後にある説明を残すかどうか、考えやすくなります。
練習用の長い話を読んでみる
次の例は、入口での出来事に、前後の情報がいくつも付いた形です。
「先週、休みの日に近くを散歩していたんです。少し前に知り合いから、新しくできたカフェがあると聞いていて。普段は別のお店に行くんですが、その日はまだお昼前で、お腹もそこまで空いていなかったので、飲み物だけでもいいかなと思ったんです。
それで、そのカフェに行ってみました。入口の前に立ったんですが、ドアが開かないんですよ。ガラスのドアで、中の席は見えました。立つ場所が悪いのかなと思って、半歩前に出ても開かない。
そのとき、近くで自転車が通ったので、ちょっと横によけたんです。それからもう一度ドアを見たら、取っ手の横に『引く』と書いてありました。自動ドアだと思って、ずっと待っていたんですよ。
お店にはそのあと入れたので、コーヒーを頼みました。焼き菓子もおいしそうだったんですが、その日は買わずに帰りました。今度はそっちも食べてみたいですね」
一つ一つは理解できる情報です。ただ、「ドアの前で待っていた姿」を伝える目的で読むと、使わなくても話が通じる部分も見えてきませんか。
情報に三つの印を付けて、残す部分を選ぶ
A:話を理解するために必要な情報
今回なら、場所がカフェの入口であること、ドアが開くのを待っていたこと、最後に「引く」の表示を見つけたことです。
このどれかを落とすと、どこで何をしていたのか、なぜ待っていたのかがわかりにくくなります。まずは、こうした情報にAの印を付けて残します。
「初めて行くお店」も、自動ドアかどうかを知らなかった状況を補う短い説明として使えます。店名や住所まで入れなくても、場面はつかめますね。
B:場面を見せるために、一つ残したい情報
「立つ場所が悪いと思って、半歩前に出た」という動きは、結果を知るだけなら省けます。それでも、入口で待っている人の様子を想像する助けになるので、今回は残してみましょう。
短くしようとすると、動きや心の声まで全部削ってしまいたくなります。でも、それでは出来事の要約だけになる場合があります。
僕は、聞き手に見せたい動きを一つ選ぶことをおすすめします。今回の中心は入口での勘違いなので、「半歩前に出る」がそれに当たります。
C:今回は外しても、中心が伝わる情報
知り合いからお店を教えてもらった経緯、お腹が空いていなかったこと、いつも行く別のお店、帰りの焼き菓子の話。今回はCとして外せます。
自転車をよけたことも、ドアの勘違いがわかった理由には関係していないので省きます。もし、その自転車に気づいたことが結末につながる話なら、残す判断になるでしょう。
大切なのは、どんな情報でも同じように削ることではありません。今話す一つの出来事に、その情報がどう関係しているかを確かめます。
中心を残して短くした例
Aの情報をつなぎ、Bの動きを一つ残すと、次のようになります。
「初めて行くカフェの入口で、ドアが開くのを待っていたんです。でも、開かない。立つ場所が悪いのかなと思って、半歩前に出ても、やっぱり開かないんですよ。
取っ手の横をよく見たら、『引く』って書いてありました。自動ドアだと思って、ずっと待っていたんです」
この形なら、聞き手はカフェの入口から話を追えます。前のお店の話や散歩の説明がなくても、最後の勘違いはわかりますね。
削った情報は、間違った情報だったわけではありません。相手に「どこのカフェですか」と聞かれたら、そのときに場所や店の話を足せます。最初から全部を説明しなくても、会話の中で渡せる情報があります。
短くしすぎて、意味が変わっていないかも確認する
「カフェのドアが開かなくて困りました」まで縮めると、故障していた話にも聞こえます。短くなっても、伝えたい出来事が変わってしまっては困りますよね。
編集後は、「なぜその行動をしたのか」と「何がわかったのか」がつながっているかを読み返します。登場人物が二人以上いる話では、「その人」「あの人」が誰を指しているかも見直してください。
また、実話を編集するときは、相手の発言や出来事の順番を変えることで、事実と異なる印象にならないようにします。説明を省くことと、都合のよい展開を作り足すことは分けて扱いたいですね。
業務上の報告やトラブルの説明では、判断に必要な経緯まで削らないでください。この練習は、日常の出来事を雑談として話す際の整理を想定しています。
録音して、削る前と後を比べてみよう
自分の話で練習するときは、次の順番で試してみてください。
・軽い出来事を一つ選び、覚えていることを文章にする
・今回伝えたい中心を一文で書く
・情報にA、B、Cの印を付ける
・Cを外し、Bから必要なものを選ぶ
・編集前と編集後を、同じくらいの速さで声に出す
録音できるなら、時間も比べてみましょう。決まった秒数を目指すより、不要な説明を減らした分、無理なく短くなっているかを見ます。早口で読んで時間を縮めると、編集の効果がわかりにくくなります。
聞き直すときは、「途中で話が別の場所へそれていないか」「同じ説明を二度していないか」「最後がわかったあとも話し続けていないか」の三点を確認します。
誰かに聞いてもらえるなら、「面白かった?」に加えて、「どの場面が浮かんだ?」と尋ねる方法もあります。自分が残したかった場面と、聞き手に残った場面を比べられますよ。
話の作り方から確認したい方へ
今回は、既にある話を短くする編集に絞りました。出来事の選び方や、話全体の組み立てから考えたい方は、エピソードトークの作り方を解説した記事も参考にしてください。
日常の会話でユーモアを使う練習に関心がある方は、笑いのコミュニケーションスクールの入門講座もご覧ください。読むだけではつかみにくい感覚を、実際に話しながら学びたい方へ向けた案内です。